ひとことで言うと
乳酸は AHA(アルファヒドロキシ酸)でありながら、同時に皮膚の天然保湿因子(NMF)の構成成分でもある、二つの顔を持つ成分です。グリコール酸より分子量が大きいため浸透が穏やかで、ピーリング効果と高い保湿効果を両立します。乾燥肌・敏感肌でも比較的使いやすい AHA として知られており、魚鱗癬のような角化症にも応用されています。
何がいいのか:期待できる効果
| 効果 | エビデンスレベル | 補足 |
|---|---|---|
| 保湿・角層水分量増加 | Level B | NMF 成分として内因性保湿に関与 |
| ターンオーバー促進・くすみ改善 | Level B | 角質のケラトリシス作用 |
| 光老化・シミの軽減 | Level B | 12% での RCT で改善確認 |
| 乾燥肌・魚鱗癬の改善 | Level B | 12% 乳酸アンモニウムでの複数試験 |
なぜ効くのか:機序
AHA としてのケラトリシス
乳酸はグリコール酸と同じ AHA として、角層の細胞間結合を弱めてターンオーバーを促進します。ただし分子量(90 Da)がグリコール酸(76 Da)より大きいため、浸透は穏やかで刺激が少ない傾向があります。
NMF(天然保湿因子)成分としての保湿作用
皮膚の角層には NMF(Natural Moisturizing Factor)と呼ばれる水溶性の保湿物質群が含まれており、乳酸塩(ラクタート)はその主要構成成分の一つ(全 NMF の 12%)です。
外用乳酸は角層に取り込まれて NMF として機能し、グリコール酸にはない内因性保湿機構の補充を行います。これが「乳酸はピーリングと保湿を同時に行う」と言われる理由です。
フィラグリン→NMF 経路の強化
フィラグリンが分解されて生成される NMF には乳酸が含まれます。外用乳酸はこの分解産物の補充として機能し、特にフィラグリン変異のあるアトピー素因のある肌にも恩恵があると考えられています。
使い方:濃度・頻度・併用
- 使用タイミング: 夜が主流。朝使用する場合は日焼け止めを併用
- 使用頻度: 初回は週 2〜3 回から。刺激感がなければ毎日へ
- 剤形: トナー(低濃度・毎日使用向き)またはナイトクリーム
相性
| 成分 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| ヒアルロン酸 | ◎ 推奨 | 乳酸のピーリング後に水分を補う |
| グリセリン | ◎ 推奨 | NMF 的な保湿の複合強化 |
| セラミド | ◎ 推奨 | バリア補修との組合せで相乗 |
| レチノール | △ 注意 | 酸とレチノールの重複で刺激が増す。別々の夜に使用 |
| サリチル酸 | △ 注意 | 酸の重複。交互使用か別日を推奨 |
副作用・注意点
乳酸は AHA の中では最もマイルドな部類に属します。
- 刺激感: グリコール酸より穏やかですが、低 pH 製品では刺激を感じる場合があります
- 妊娠中: 局所使用は多くの場合使用しやすいとされていますが、広範囲・高濃度の使用は医師に確認してください
- 高濃度製品(12%超): 医療・エステ領域の濃度では専門家の指導下での使用を推奨
よくある誤解
「乳酸はグリコール酸より効果が弱い」
ピーリング強度はグリコール酸の方が強いですが、保湿効果(NMF 補充)は乳酸固有の優位点です。目的によっては乳酸の方が適しています。
「AHA は肌を荒らす」
適切な濃度・頻度・その後の保湿を守れば、AHA はターンオーバーを正常化し、長期的には肌のテクスチャーを改善します。「荒らす」のは過度な使用や紫外線対策不足が原因です。
引用文献
- 1. 臨床試験Journal of the American Academy of Dermatology, 1996 PMID: 8784274
- 2. RCTAmerican journal of clinical dermatology, 2002 PMID: 11978141
- 3. RCTJournal of the American Academy of Dermatology, 1996 PMID: 8642081
- 4.