その症状、本当はどういう状態か

乾燥肌(ドライスキン)は、角層の水分量が低下した状態です。単純な「水分不足」ではなく、皮膚のバリア構造が機能低下しているために水分が蒸散し続ける状態(TEWL:経皮水分蒸散量の増加)が本質です。

指標正常な肌乾燥肌
角層水分量(コルネオメーター)>30 a.u.<30 a.u.
TEWL(g/m²/h)<10>10〜15
角層脂質(セラミド比率)正常低下

乾燥肌には 3 つのタイプが存在します。

① 脂質欠乏型(最も多い) セラミド・脂肪酸・コレステロールなどの角層脂質が不足し、ラメラ構造が崩れる。洗いすぎ・加齢・環境が原因になりやすい。

② 天然保湿因子(NMF)欠乏型 フィラグリン由来のアミノ酸・乳酸塩・ピロリドンカルボン酸などが不足。遺伝的なフィラグリン変異が関与することも。

③ 皮脂分泌不足型 皮脂腺からの皮脂分泌が少なく、天然のオクルーシブ機能が低下。加齢(特に閉経後)に多い。

主な原因

環境・生活習慣因子

  • 低湿度・低温(冬季、エアコン環境)
  • 過度な洗顔・入浴(界面活性剤による脂質除去)
  • 熱いお湯での洗顔・長風呂
  • 紫外線暴露(バリア機能を慢性的に損傷)

加齢因子

  • セラミド産生量の低下(特に 30 代以降)
  • 皮脂分泌量の低下(特に女性の閉経後)
  • フィラグリン代謝の変化(NMF 量の低下)

疾患・遺伝的因子

  • フィラグリン遺伝子変異(アトピー素因)
  • 甲状腺機能低下症・糖尿病
  • 魚鱗癬(遺伝性角化症)

推奨される成分(エビデンス別)

Level A 推奨

セラミド バリア構造の主成分。乾燥肌・アトピー性皮膚炎でセラミド低下が示されており、外用補充で TEWL が低下する場合があります。Ceramide NP / AP を含む製品を選択。

ヒアルロン酸(ヒュメクタント) 吸湿性が高く、角層の水分量を短期的に支える。高分子は表面でフィルムを形成、低分子は角層側で水分保持を補助。乾燥環境ではオクルーシブとの組み合わせを基本にする。

グリセリン(ヒュメクタント) NMF の構成成分に近く、保湿と角層柔軟化を両立。安価で安全性プロファイルも比較的良好。10〜20% 配合製品が検討しやすい。

Level B 検討可

パンテノール プロビタミン B5 として角層細胞の修復・増殖を促進。ケラチノサイト増殖とバリア修復を助け、特に刺激後・損傷後の肌に有効。

スクワラン 皮脂成分に近い植物由来オイル。オクルーシブとしてヒュメクタントが引き込んだ水分を封じ込める。非コメドジェニック。

ナイアシンアミド セラミド・遊離脂肪酸の合成を促進し、バリア機能を根本から強化する。

Level C 補助的

センテラ・アジアチカ・アラントイン 抗炎症・細胞修復作用で乾燥に伴う炎症・かゆみを緩和。

乳酸(低濃度) NMF 成分としての保湿と穏やかな角質軟化の二重作用。

避けるべき成分・行動

項目理由
高濃度グリコール酸(>5%)バリアをさらに損傷し乾燥を悪化させる
アルコール(エタノール)高配合製品皮脂・脂質を除去しバリアを破壊
熱いお湯の洗顔・入浴角層脂質が溶出し乾燥が悪化
香料・防腐剤高配合製品刺激を加え乾燥・炎症を悪化させる

推奨ルーティン例

AM(朝)

  1. ぬるま湯(36℃以下)洗顔(または水洗顔のみ)
  2. ヒアルロン酸・グリセリン配合の化粧水(ヒュメクタント)
  3. セラミド・ナイアシンアミド配合クリーム(バリア補修)
  4. スクワランオイル 2〜3 滴(オクルーシブで蓋)
  5. SPF30 以上の日焼け止め

PM(夜)

  1. 低刺激洗顔(硫酸塩フリーが理想)
  2. ヒアルロン酸美容液(水分引き込み)
  3. パンテノール・セラミド配合クリーム(バリア修復)
  4. スクワランオイル(仕上げのオクルーシブ)

入浴のコツ

  • お湯の温度: 38〜40℃以下
  • 入浴時間: 10〜15 分以内
  • 洗顔料の泡で優しく洗う(ゴシゴシ禁止)
  • 入浴後 3 分以内に保湿を開始する

専門医に相談すべきサイン

乾燥肌のほとんどは適切な保湿で改善しますが、以下の場合は皮膚科受診を検討してください。

  • 保湿剤を 2 週間以上毎日使ってもかゆみ・ひび割れ・落屑が改善しない場合
  • 局所的な赤み・湿疹が出現した場合(アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎の可能性)
  • 手・足・口周囲が冬季に著しくひびわれ・出血する場合
  • 全身に広がる強いかゆみ・鱗屑がある場合(魚鱗癬等の角化症を疑う)
  • 全身倦怠感・体重増加を伴う乾燥肌(甲状腺機能低下症を疑う)

引用文献

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    システマティックレビュー
    American journal of clinical dermatology, 2015 PMID: 26267423
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    総説
    The British journal of dermatology, 2008 PMID: 18510666
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    総説
    Indian journal of dermatology, 2016 PMID: 27293248